アベノミクスは幻想だったのか?
民主党政権の酷さは言うまでもありませんが、敢えてフォローするなら時代が悪かったです。時代が悪かったから、政権交代ができたのですが。
リーマンショックによる経済危機、欧州債務危機、東日本大震災と政権運営にとって外的なマイナス要素が多すぎました。
その点、安倍政権発足時はラクでした。
世界経済も回復基調にあり、東日本大震災による復興需要もあり、日本経済が回復する土台が揃っていました。
米国株式市場を見れば世界経済の回復期であったことは分かります。米国株式市場にアベノミクスが与えた影響は僅かです。
つまり、よっぽど無能でない限り、誰がやっても経済回復はしたのです。時代に恵まれたわけです。
民主党政権と対比し、優れてることをアピールすることが簡単でした。自助努力をしなくても外的要因が助けてくれるからです。
既に死語になっていますが、アベノミクスの3本の矢を振り返って見ましょう。
3本の矢覚えてますか?全部折れちゃってるというか、そもそもなかったのですから。
もしくは、3本目の矢はマスクだったという笑えないオチになりそうです。
分かりやすい言葉に人は惹きつけられます。
アベノミクス3本の矢
①大胆な金融政策
デフレに苦しむ日本経済でしたので、政府・日銀はインフレターゲットを設定しました。
消費者物価年率2%の上昇
今日までの結果はこちらです。
総務省HPデータをもとにArbei作成
安倍政権下、消費者物価上昇率2%を超えたのは2014年のみです。消費税が5%→8%になった年です。消費増税分が価格に転嫁されていただけです。
2013年、日銀総裁が黒田総裁に代わり、2年で消費者物価2%上昇を掲げました。そのために異次元の金融緩和を実施しました。
異次元緩和とは、
無制限の量的緩和
円高是正
消費者物価年2%上昇
量的緩和については、こちらを参照願います。
安倍政権発足時は輸出企業が円高に苦しんでいました。でも、通貨価値が高いことは悪いことだけではありません。海外旅行に行った時のことを想像してもらえればいいと思います。
日本を牽引する企業が輸出企業が多いことと、経団連所属企業が輸出企業が多いために円高是正に動いたものと思われます。
輸出企業がいまだに中心になっているのは、30年前以上と同じ構造です。
大胆な金融政策は、マーケットにインパクトはありました。アベノミクス3本の矢と同様に、消費者物価を2年で2%上昇させると分かりやすいキャッチフレーズでした。
その後、物価が上昇しないことに焦った日銀は2016年にマイナス金利を導入し、民間金融機関へ融資を促し、市中にお金を垂れ流すことを目的としたものでしたが、効果は限定的でした。
副作用として、民間金融機関、特に体力の弱い地銀、信金などへはボディブローのように効き、収益を押し下げています。地銀の決算・株価を見れば一目瞭然です。
マイナス金利を導入すれば、銀行はリスクを取ってドンドン融資をするとでも思ったのでしょうか?
そもそも、銀行が貸したい先は資金需要は少ないです。
銀行が貸したくない先は返済能力に疑問がある先です。事業性を見抜き、リスクを獲って資金協力できる銀行は稀少です。まず、ダメになった場合を想定し、審査をする減点主義だからです。
大胆な金融政策は株式市場・不動産市場にはプラスに働き、資産増加効果がありました。
保有資産価値が上昇すれば、消費に回せる資金も増えます。しかし、その恩恵を受けることができた層は、ある程度余裕のある層です。
消費者物価上昇のためには、所得の底上げが必要ですが、可処分所得が増えたと実感できている層は僅かではないでしょうか。
②機動的な財政政策
公共投資は、2013年に東京オリンピックが決まったこともあり、必然と必要になりました。ラッキーですね。
オリンピック開催のためにインフラ整備が必要なので公共投資は必然と伸びます。また、大いに盛り上がった2020年ラグビーW杯は全国で試合が開催されましたので、こちらもインフラ整備がされました。
その他はどうでしょうか?アベノミクスがなくても公共投資はあります。これも東京オリンピックが決まったという時代に助けられたのです。
例えば、必要な公共事業として災害に強い都市づくりとして電線を地中に埋め、電柱をなくすというものがあります。阪神淡路大震災を教訓に電柱を地下に埋めるという話がありましたが、どうなったのでしょうか。街中はいまだ電柱だらけです。
コロナ危機で非常事態宣言をしましたが、休業補償も機動的な財政政策ではないでしょうか?
③民間投資を喚起する成長戦略
全く矢が放たれなかったのが、成長戦略です。人口減少と少子高齢化、そして労働人口の減少、一方で株式会社日本国の生産性は一向に低いままです。
民間投資を喚起する具体的な成長戦略を政府は打ち出しましたか?
海外から大きな受注を獲り、民間投資が活発になりましたか?
民間投資を喚起するためには、お金を貯め込んでいる企業がお金を使わせなくてはいけません。
打ち出した成長戦略はありますか?何か記憶に残っていますか?
”民間企業さん、勝手にやって下さい””ではなかったでしょうか。
成長戦略の一つは”働き方改革”だったのでしょうか?
働き方改革は、労働者目線ではなく、経営者目線の発想です。
体裁としては労働者のワークライフバランスですが、実体は残業代を削り、企業収益を底上げすることが目的です。トップラインが伸びないので、コストである人件費を減らすことにより企業業績に見た目をよくすることが目的のように思えます。
考えられる成長戦略の一例
増え続ける社会保険に対して消費増税をしました。増え続ける社会保険費を減らそうという発想が乏しいです。
社会保険費が増え続ける背景の一つに不要な受診が多いがあると思います。
納めている社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料)も毎年、保険料率が上昇し、負担が大きくなっています。
整形外科の待合室の光景って知っていますか?高齢者だらけです。顔ぶれも変わりません。病院の待合室が談話室になっています。
土日も関係なく、整形外科は混んでおり、多くの受診者が高齢者です。
果たして、受診する必要があって病院に来ているのか疑問に感じます。
病院は患者=お客様なので、病院は患者を無碍にしませんし、受診ウェルカムです。
オンライン診療を普及させればいいと思うのですが、医師会への忖度でしょうか。なかなか普及しないというか、普及させてくれません。今回のコロナウィルス蔓延を機に、オンライン診療が社会に定着することを期待します。
安価なオンライン診療が普及し、不要な診療をなくすことによって社会保険費も下がると考えてしまいます。
既存の規制をなくし、既得権益を見直してこそ真の改革ではないかと思います。
アベノミクスはいったいなんだったのか?果たして存在したのかと思う今日この頃です。
Arbei