思い込みは怖いんです
はじめに
コロナ危機以降、多くの飲食店が窮地に追い詰められている報道が毎日されています。飲食店関係者のインタビューも報道され、厳しい実情を伝えています。本当に厳しいと思います。
私自身も、2月中旬以降は居酒屋に行っていません。行きたくても、行くべきではないと判断しているからです。2ヵ月近く居酒屋に行っていないと、どういう居酒屋が好きなのか分かってきました。
政府が掲げた108兆円の経済対策も真水の部分が少なく、骨抜きのような感が否めません。なにより、”政府が責任を持ってやる”という姿勢が見えないのは、情けない限りです。
大阪府・東京都という日本の核である都市の知事が、何とかしようとする姿勢を見せてくれているのが救いですが。本気で取り組もうとすると政治家も目つきが変わることが今回の危機で分かったことです。
逆の立場で物事を考えられないと・・
とあるテレビ番組で、コメンテーターが「休業要請中に家賃が払えなくても、出てけっていうオーナーはいない」という発言をしました。
これは、分かりやすい弱者である借りているテナント側の立場からの発言で著しく公平性に欠けた発言であると思いました。
飲食店等のことを思っての発言でしょうが、テナントオーナー側の状況を一切考えない発言だからです。
テナントオーナーもボランティアで貸しているわけではなく、営利目的です。家賃が入ってこなければ、テナントオーナーが困ることは容易に想像できます。
不動産物件を購入するために融資を受けていることも多々あります。
テナントオーナーも一見、資産家に見えますが、純資産(資産総額ー負債総額)が少ない、カツカツの方も多いです。
自身の発言の意味・質・影響力を考えることなく、思い込みからの発言、反対側の立場のことを無視した発言と思いました。
物事を一つの方向からのみ捉えると怖いです。特に自分が正しいと思い込んでしまい、違う側面から考えられなくなると誤った判断を引き起こしてしまうことがあります。
"これは良い、これは間違いない"と思った時こそ、自身と違う立場になって、これはどうなんだろうと考えてみることにより、客観的な分析ができます。
自分が良いと思った時は、強い思いが入っています。強い思いは、思い込みにもなり、正しい判断ができなくなる恐れがあります。
裁判を想像してください。
被告を追及する検察、被告を擁護する弁護士、事実を述べる証人、中立的な立場から判決を出す裁判官。
検察、弁護士、裁判官、証人と立場が変わることにより、事案の見え方が変わってきます。
投資の世界でも
投資の世界でも、思い込みは誤った判断をさせてしまうことがあります。
値上がりが期待できる銘柄を見つけたとします。その時、何を考えますか?
買いたいと思う銘柄については、買うために自分自身を納得させようと買い材料を探します。悪いところには目をつぶろうとします。
良いところにばかり、目がいってしまうはずです。
一方で株式は売り方もいます。
同じ株価でも、買いたい人、売りたい人がいるのです。
買いたいと思ったら勢いに任せて買ってもいいですが、あえて売りたい材料を探してみてはいかがでしょうか。
買い材料と売り材料どちらが大きいかを比べ、判断してみるのも銘柄選定には役立つと思います。
様々な側面から判断しよう
PER・PBR・ROE・ 配当利回りなど投資するにあたって様々な指標がありますが、一つの指標だけで判断すると本来の株価が見えなくなります。
PER・PBRが低くければ、なぜ市場は割安な株価を放置しているのか?業界全体の将来性はどうなのか?など検証し、それでも買いだと思えれば、結果がどうであれ買いです。
配当利回りは高いけど、この配当金は持続可能なものなのか、配当性向はどの程度なのか、減配はないかなど考察すべかです。
株価のチャートも然りです。ローソク足の上ひげ、下ひげなど平時では役に立ちますが、今回のような危機時には判断材料にならなかったのではないでしょうか。
株価は、どんなに分析しても、理屈と違う動きをします。
買った銘柄が下がった場合の選択肢として、損切り、塩漬け、ナンピン買いがあります。
保有銘柄が下落した場合の合理的な選択は損切りです。何%下がったら、売却するというルールを決めておきます。損失を限定できます。
合理的な言動は難しい
しかし、人は合理的な判断ができない場合が多々あります。
株価が下がった時、なんとなく買った場合、ナンピン買いしていいのかの判断も後追いになります。
たいていは、塩漬けになってしまい、最後は諦めて売却になるパターンが多いのではないでしょうか。
買いたいと思っている株式を、売りたいという側面から分析することにより、買った株式が下がった場合でも、”〇〇という理由だから、いずれ上がる、だから買い増そう(ナンピン買いしよう)”と思えるかもしれません。
不動産についても同じです。売買価格は適正なのか、周辺環境はどうか、長く住める物件か等を再検証すべきです。
投資用なら、より慎重に判断すべきです。
売買価格は適正なのか、入居ニーズはあるのか、入居者の勤務先などに偏りはないか、流動性がある地域か、所有権移転が頻繁ではないかなど買いたいという気持ちをなくして、中立的もしくは逆の立場になって判断をすべきです。
紙面の数字に踊らされることがないようにしましょう。
まとめ
思い込みは、時に強い思いとなり、信念となります。強い信念を持って、取り組むことは悪いことではありません。
一方で、冷静な判断ができなくなる可能性もあります。
同じものを見ていても、東から見た景色と、西から見た景色は異なったものに見えます。
合理的になれなくても、冷静な判断・見解を持つことが重要と思っています。
今日のような時こそ、冷静かつ人を思いやる行動を。
Arbei