相続と贈与②
相続税ゼロでも申告は必要?
相続と贈与①をご覧いただいた方には重複になりますが、
相続資産>相続税基礎控除 の場合、相続税申告が必要になります。
相続税の基礎控除以外にも、相続資産から控除できるものがあります。
例えば、”配偶者の税額軽減”、”小規模宅地の軽減特例”です。
しかし、相続資産>相続税基礎控除 の場合、相続税申告が必要になります。
生命保険金の非課税枠
生命保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の数
相続放棄した者、欠格・排除に該当した者は非課税の適用は受けられません。
相続人ごとに500万円の非課税枠があるわけではなく、相続資産から生命保険金の非課税枠を差し引くことができます。
生命保険は被保険者が亡くなったときに、保険金が発生しますので、”みなし相続財産”として扱われます。
例
相続財産:8,000万円
生命保険金:2,000万円
法定相続人:妻、長男、長女の3名
保険金の受取 妻:1,000万円 長男:500万円 長女:500万円
課税遺産額=8,000万円+2,000万円-4,800万(基礎控除)
課税遺産額は、5,200万円になります。
生命保険の非課税枠は500万円×3名の1,500万円です。
各人の保険金の非課税金額
妻 1,500万円(生命保険非課税枠)×1,000万円/2,000万円=750万円
子 1,500万円(生命保険非課税枠)×500万円/2,000万円=375万円
相続税総額の計算
相続税の総額は、法定相続人が法定相続分を相続したと仮定して算出します。
例の課税遺産額は5,200万円です。
法定相続分通りに相続すると、各人の課税遺産額は
妻(1/2)2,600万円
長男(1/4)1,300万円
長女(1/4)1,300万円
ここから生命保険の非課税分を差し引きます。
妻 2,600万円-750万円=1,850万円
長男 1,300万円ー375万円=925万円
長男 1,300万円ー375万円=925万円
妻 1,850万円×15%-50万円=227.5万円
長男 925万円×10%=92.5万円
長男 925万円×10%=92.5万円
相続税の総額は、412.5万円になります。
10,000万円の相続資産があり、生命保険の非課税枠を利用していない場合の相続税の総額は630万円になりますので、217.5万円の節税ができたことになります。
時々、生命保険の非課税枠について誤った解釈をしている方がいます。
”500万円×法定相続人”を相続税から差し引けるという勘違いです。あくまで、課税資産から差し引くものです。
生命保険は、相続税の非課税枠以外にもメリットがあります。
預金や有価証券は相続が発生すると相続手続きが終わるまで凍結されます。
2019年7月より最大150万円まで、被相続人の預金残高×1/3×法定相続分まで引き出し可能になりました。但し、法定相続人である証明などが必要です。
生命保険だと、亡くなった後、所定の書類を提出すれば1週間前後で現金化することができます。
また、生命保険金は受取人固有の財産になりますので、他の相続人と分割する必要がありません。遺したい相続人に遺すことができます。
小規模宅地等の特例
居住用の特定居住用宅地等は330㎡まで不動産評価額を80%減することができます。
分かりやすく言うと、自宅の評価は330㎡(100坪)までは20%の評価でokということです。
貸付用の不動産賃貸用宅地等は200㎡まで不動産評価額を50%減することができます。
事業用の特定事業用宅地等や特定同族会社事業用宅地等は400㎡まで不動産評価額を80%減することができます。
小規模宅地等の特例適用要件には継続して居住するや配偶者・同居親族・非同居親族などにより、適用要件が異なります。詳細は国税庁HPをご確認ください。
例
相続財産:6,000万円
うち居住用宅地評価(150㎡):2,000万円
法定相続人:妻、長男、長女の3名
課税遺産額=6,000万円-4,800万円=1,200万円
小規模宅地等の特例適用後だと,
課税資産額=4,000万円+2,000万円×0.2 4,400万円になり、相続税の基礎控除内におさまります。
ただし、この場合も相続税は課税されませんが、申告は必要です。
配偶者の税額軽減
配偶者は、生計を共に支えてきた親族であり、相続の際にも”配偶者の税額軽減”があります。ただし、婚姻届けを出した配偶者のみが適用対象者であり、内縁関係の場合は配偶者に該当しません。
配偶者が相続放棄をした場合でも、遺贈により取得した財産があれば適用されます。
配偶者が法定相続分相当までの相続、または16,000万円までの相続なら配偶者への相続税はかかりません。
配偶者の税額軽減の適用を受けるためにも、申告は必要です。
課税遺産額から差し引けるのは生命保険の非課税枠、小規模宅地の軽減特例、配偶者の税額軽減だけではありません。利用できる方が多く、節税効果も大きい反面、申告不要と誤った認識をしている方が多いです。
一般的な情報提供のみを目的としたものであり、税務・投資アドバイス等ではありません。
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